〜「宿 にしむら」で感じる、ゆっくりと流れる時間〜
静岡市の奥深く、山に抱かれるようにして建つ「宿 にしむら」。
ここは、江戸時代から250年以上の時を経た、旧庄屋の古民家です。
この家に泊まるということは、単に「宿泊する」ことではありません。時間をさかのぼり、自然とともに呼吸し、五感が開かれていくような体験が楽しめます。
ある家族が見つけた時間の贅沢
先日、ヨーロッパから来たご家族が「宿 にしむら」に滞在されました。
その家族は、初めての“本物の古民家”体験に目を輝かせていました。
夕方。
縁側に座布団をおもいおもいに敷いて、みなさんが本を読んでいたようでした。
夕日が山に沈むまで、大きな声でおしゃべりを楽しむのではなく、ただ静かにページをめくる音だけが聞こえていました。

日本への旅行は行くところがたくさんあって、いつも人混みに揉まれているのだと思います。こんなふうにゆっくりと日が暮れるのを感じていただけてよかったと思いました。
村の風景を楽しむ
早朝には、家の周囲の山里を散策されたようです。
舗装されていない道、苔むした石垣、神社の鳥居、そして地元の人々が手入れしている畑。
彼らにとっては、すべてが“異国の風景”でしょう。でも、どこか共通するところもあるのかも?

夏の時期は、近くの畑に里芋の葉っぱが茂っています。ジブリアニメのトトロにでてくるような大きな葉っぱを発見してくれたでしょうか。近くには竹林と水路が両側にある小径があります。ヨーロッパにはない竹林。楽しんでいただけたら嬉しいです。
このような日常の風景のひとつひとつが、彼らの中で「旅の核心」として記憶に残っていくのでしょう。
囲炉裏と静けさ
夏の間は囲炉裏は使いません。でも、囲炉裏の周りはいつも人が集まる場所。灰を均していると、なんだか落ち着くものです。
部屋の明かりは、昔の家にあったような丸いガラスの笠。でも現代の家のように明るくなりません。長い時間のなかで色づいた木の壁はほとんど黒くて反射しないのです。
あいにく曇り空で星を眺めることはできませんでしたが、彼らは日本の長い夜を楽しんでいただけたようでした。
現代の旅は、どこか慌ただしいことが多いですが、「宿 にしむら」では、あえて“何もしない時間”が贅沢になります。
古民家で過ごすという選択
古民家に泊まるというのは、ホテルや旅館のような“快適さ”とは少し違います。
床のきしみ、すきま風、お手洗いに行くにも外に出なければなりません。
でも、だからこそ、「本当の日本」を感じることができるのです。
朝の光が土間に差し込む瞬間、ふすまを開ける音、木の香り。
ここでは、“体験”がすべて自然に始まり、日常の喧騒から離れた静かな旅があなたを待っています。
最後に
「宿 にしむら」は、写真映えする宿というより、“記憶に残る風景”を提供する場所です。
あなたも一度、スマートフォンを置いて、風の音や鳥の声に耳をすませてみませんか?
ここでは、時間も、旅のかたちも、あなたのペースで流れていきます。
20250709